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第1日目 平成19年6月8日(金)
 
セッション1.「量子構造体:2つのメゾスコピック系」
ディスカッションリーダー:渡辺信一(電通大)
 メゾスコピック系の量子制御が広く関心を集めている。量子ドット(QD)は微細構造内に原子のように離散状態を持ち、特定のゲート電圧を加えると電気伝導度に鋭い共鳴ピークを示す。QDを経由する経路としない経路間の干渉によって、馴染の深い Fano profile が観測される。Aharonov-Bohm効果のようなトポロジカルな現象や、QD内の局在電子スピンによるFano-Kondo 共鳴の観測も行なえるそうである。

 一方、原子トラップ技術とサブミクロン直径の光ファイバー(ナノファイバー)技術の組み合わせで、原子を用いたメゾスコピック系の研究が進行中である。冷却原子が、ナノファイバー表面に光波長以下の距離まで接近すると自然放出光の30%近くがファイバー伝播モードに放出される。ナノファイバー近傍に単一原子をトラップすることも可能になりつつある。操作性のある複数原子のトラップや量子もつれの制御も行えそうである。

 2名の先生方をお招きして、ナノファイバー近傍での原子と光の物理と、量子ドットの物理をご紹介していただき、それらの対比や今後の展開などを議論したい。
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セッション2.「極短パルスレーザー場における分子」
ディスカッションリーダー:菱川明栄(分子研)
 近年のレーザー技術の発展に伴い,現在では10フェムト秒以下の極めて短いパルス幅をもつ高強度レーザー場の発生が実現されている。一般にこのような極短パルスレーザー場と相互作用した分子は振動運動に比べて十分速やかに多重イオン化するため,そのクーロン爆発過程を利用することによって,反応過程を構造の変化として実時間で追跡することが可能となった。一方,パルス幅が数光学サイクル程度である場合,パルス形状よりもその光電場波形が重要な役割を果たすことが報告されており,特に質量の軽い水素原子を含む多原子分子のダイナミクスに関心が寄せられている。

 本セッションでは、極短レーザーパルスを用いた強レーザー場中における分子ダイナミクスについての最新の研究手法(実験・理論)を取り上げるとともに、極短パルスを用いた化学反応追跡及び制御に対する将来の展望と可能性について言及する。
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セッション3.「量子測定にまつわる基礎的問題」
ディスカッションリーダー:井元信之(阪大)
 量子力学誕生当初から議論の絶えなかった「量子測定の問題」は、ともする と実験と無関係な哲学的問題と思われがちであるが、一世紀近くにわたる碩学達の考察と技術の進展に伴い、問題の所在や実験との関係は一歩一歩掘り下げられて来ている。特に近年のテクノロジーの進歩はこの話題は哲学から実学へと変えつつあると言ってよい。測定とは何かという根源的問いに対する様々な 解釈、ベル不等式の意義と現在投げかけられている疑義の意味、不確定性やエンタングルメントの深い理解、測定分解能の標準量子限界の打破可能性と具体 的方法など、理論と実験の両面から話題提供する。現段階でどの話題がまだ実験に乗らずどの話題が実験に乗るのか、さらにどの話題は近未来の実用に繋がり得るものか、最先端の研究者に語ってもらうとともに、参加者の多面的な議論を喚起したい。
 
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第2日目 平成19年6月9日(土)
 
セッション4.「分子反応の立体ダイナミクス」
ディスカッションリーダー:高口博志(理研)
 分子の立体性は化学結合の方向性に起源を持ち、化学反応過程と密接に関係する。反応分子が接近する際、その相対的向きが大きな反応選択性を与えることは、立体化学の基本的概念として、有機化学・物質科学の分野で広く受け入れられてきた。この古典的・直観的モデルは反応メカニズムの解釈に適用され、マクロな現実系を精度よく説明する。一方、微視的レベルで分子の立体的反応性を検出して、立体化学の作用メカニズムとその量子的性質を原子・分子衝突の観点から解明するためには、光と分子線に関する高度な実験的方法論が要求される。空間座標を制御した多次元ポテンシャルエネルギー曲面上での分子系の運動と、物質科学としての化学過程を結びつける「立体ダイナミクス研究」は、精密実験手法の技術革新を背景に近年新しい展開を見せ、分子固定系における反応性分布の可視化が実現されるようになってきた。

 本セッションでは、衝突性イオン化反応と光イオン化反応を中心に、分子の立体的性質が支配する化学現象と、その研究手法の動向を取り上げる。立体ダイナミクス研究の最新の成果を概観して、その意義と重要性についての議論を深めるとともに、化学反応研究に対する将来の展望と可能性に言及することを目的とする。
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セッション5.「高輝度コヒーレントX線源」
ディスカッションリーダー:中野秀俊(NTT)
 高強度レーザーの波長変換光である高次高調波、レーザープラズマを利得媒質とするX線レーザーに、X線自由電子レーザーも加わり、EUV〜X線領域におけるコヒーレント光源開発研究が活性化している。また、こうした極短波長領域の光源を利用した新たな応用研究領域も開拓されようとしている。

 異なる手法に基づくコヒーレントX線源研究に従事されている3名の講師をお招きし、各種方式の現状ならびにその将来展望を語って頂き、それぞれの特徴整理を試みたい。今回の試みが、将来に期待される様々な応用研究の際、利用者が果たしてどの光源にアクセスしたら良いかを検討する一助となれば幸いである。
 
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