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走査トンネル顕微鏡の探針先端と試料基板の間に形成される1nm以下の空間にフェムト秒パルスレーザーを照射することで、ナノスケールの微小空間に存在する分子から生じる和周波発生信号の観測に成功した。従来の和周波発生分光法では、光の回折限界の制約から、得られる信号はサブマイクロメートル程度の領域に存在する100万個以上の分子の平均的な情報だったが、本研究では回折限界をはるかに凌ぐ領域からの信号を検出した。さらに、得られた信号の解析により、微小空間に存在する少数分子の向きを識別できることも確認した。本研究は、超高解像度の分光イメージングや、単一分子レベルの超高速分光といった計測技術への発展が期待される。
向きの揃った配列・配向分子アンサンブルは、分子光反応における電子のアト秒立体ダイナミクス研究の理想的な試料である。発表者らは、非共鳴2波長レーザー電場のみを用いる全光学的な分子配向制御技術の高度化を進めて来た。最近、ナノ秒2波長レーザーパルスにプラズマシャッターを適用し、そのピーク強度付近で立下り数100フェムト秒で遮断する際に、相対位相を安定化することに成功した。分子偏向器で選別した回転基底状態にあるOCS分子を試料とし、高い配向度をもつ配向分子アンサンブルを外場のない空間に生成することに成功した。レーザーパルスを遮断した後の配列・配向のダイナミクスを数値計算の結果と比較して議論する。
非共鳴2波長レーザー電場のみを用いる全光学的分子配向制御技術では、ポテンシャルの非対称性を最大化するため、一般に2波長間の相対位相φは0(またはπ)を仮定して数値計算などを行って来た。最近、この相対位相差φの関数sinφとcosφを含むすべての項の寄与を活かすため、φ = π/4を選ぶと、超分極率の非対角成分のうち、アミノ酸のL体とD体で符号が異なるものの寄与により、互いに鏡像異性体の関係にあるL体とD体をレーザーパルスの進行方向に関して逆向きに、かつ3次元的に配向させる技術に利用できることを明らかにした。逆向きにかつ3次元的に配向した分子アンサンブルは、アミノ酸のホモキラリティーの起源の探究への応用が期待される。
我々の研究グループでは、加速器施設において原子核破砕反応で生成された低収量の不安定核原子に対して超流動ヘリウム(He II)環境とレーザー・RF/MW二重共鳴法を利用したレーザー核分光法(OROCHI法)を開発している。現在理研RIPSビームラインにおいて84Rbの超微細構造間隔測定を目指している。2025年5月に実施したRIPSマシンタイム実験では、入射エネルギー70 MeV/uの一次ビーム84KrをBe標的に照射し二次ビームの生成を行った。ビームライン下流に設置した超流動ヘリウムを保持するクライオスタット容器内にビームを導入し、一次ビーム84Krの停止位置制御と二次ビームの検出に成功した。
本ポスターでは実験の詳細について報告を行う。
レーザー共振器の小型高出力化における最大の問題はレーザー媒質における熱問題である。この問題を解決するため、我々は室温下での表面活性接合によるレーザー利得媒質と透明ヒートシンクとの層状コンポジット素子を開発した。層状コンポジット媒質の排熱性は層間での熱抵抗に大きく依存するが、これまでに層間での熱抵抗に関する評価は行われてこなかった。今回、様々な接合状態のサファイア/Nd:YAG単結晶積層試料についてそれぞれの層間熱抵抗および実効熱伝導率について評価した。特に常温接合界面の場合、熱抵抗はサファイア層およびNd:YAG層の熱抵抗と比較して無視できる程度であることが判明した。
粒子加速への適用を目的に、非線形光学波長変換を介した高強度テラヘルツ(THz)波発生を検討している。従来は強誘電体LiNbO3結晶を用いた擬似位相整合(QPM)素子の利用が広く用いられているが、THz波吸収抑制のための低温冷却の必要性やレーザー光損傷耐性などに問題がある。これに対し我々は、将来の高出力・高輝度化対応を見こし、高耐久高安定な水晶(α石英)を利用したQPM素子の検討を進めている。ここでは薄板多接合による大口径QPM水晶の実現を目的に、プラズマ処理を介した水晶薄板接合の特性評価を行ったので報告する。
Nd:YAGと透明ヒートシンク(サファイア)を常温接合することによる分散型面冷却(DFC: Distributed Face Cooling)を開発し、その試験を行った。 DFCでは、エンドキャップと比較して熱レンズ効果が40%低減されることが判明した。また、DFCでは測定可能な偏光劣化は見られなかったが、エンドキャップでは25 Hz動作時に偏光劣化率が最大15%まで大きくなることがみられた。
2段2パス構成の増幅器に2つのDFCを導入し、各段で885 nm、10 Jのポンピングを行った。その結果、2 Hzの繰り返し動作において4 mJのシード光が2.3 Jまで増幅された。さらに、100 Hz・1秒間のバースト動作では、出力エネルギーが最大1.8 Jに達した。
本研究では、高エネルギー物理への応用が期待されるTHz波加速に向け、波長約1.5 mmの高強度THz波を生成するための光源技術を開発した。縮退モードでのPPLNとVBGを組み合わせたOPOにより、1ns以下の短パルスかつ1 nm以下の幅を持つ2126 nmと2130 nmの二波長光が生成され、その二波長光をOPAにて増幅したところ短パルス、狭線幅を維持したまま30mJまでの増幅が観測された。さらにその二波長光による非線形光学結晶励起からのTHz波発生も実証することができた。本発表では波長変換の詳細な特性評価を予定している。
室温でのCr:LiSAFとサファイアの接合に成功した。バルク試料と接合試料の熱特性を25~100℃で測定した。熱伝導率はバルク(2.52W/mK)より接合サンプル(9.84W/mK)の方が4 倍向上した。これらの結果は、ボンディングされたレーザーチップを用いたCr:LiSAF の出力スケーリングに有望である。
高偏極RIビームを利用することで原子核の微視的な構造を反映する核モーメントの測定が可能だが、従来の手法では適用可能な原子種が限られ、偏極度も低いという課題がある。RI Atom Beam Resonance(ABR)法は、原子種に依存せず高いスピン偏極が可能な手法である。本研究では、ABR法で必要とされる超微細構造間の遷移を引き起こすための形状の異なるマイクロ波アンテナを3種類製作し、その性能評価を行った。試験にはレーザーによる偏極が可能で取り扱いが容易なRbガラスセルを用い、レーザー・マイクロ波二重共鳴法による試験を実施した。本ポスターでは、アンテナの設計と試験の結果を報告する。
我々の研究室では、超流動ヘリウム中に導入された原子に対し、光ポンピング法とレーザー・マイクロ波二重共鳴法を用いて超微細構造準位間隔の測定を行っている。この手法は1電子系であるアルカリ原子に対して有効であり、11族であるAu、Ag原子に対しても適応可能であるが、11族原子の励起波長が紫外光であり、超流動ヘリウム中での強い励起用レーザーが必要である点で実験が困難である。先行研究にて197Auの超微細構造間隔の遷移観測が初めて行われた。本研究では、超流動ヘリウム中においてアルカリ原子と比較可能な6桁精度での超微細構造間隔測定のため、波長263 nm励起用レーザー光源の生成、マイクロ波周波数掃引時の周波数確度の検証を行った。
我々は超流動ヘリウム(He Ⅱ)環境下でレーザー分光法による原子核構造の解明を行っている。本研究では、He Ⅱ環境下において加速器で生成された不安定核原子 84Rb の超微細構造間隔の高精度測定を目標としている。84Rbを対象とした実験に向け、超微細構造異常を議論可能な6桁の測定精度を得るための準備実験として、実験セットアップの確立や検出感度の確認等を行う必要がある。そこでHe Ⅱ保持装置であるクライオスタットを模したダミークライオスタットチェンバー内に安定核85Rb原子が封入されたガラスセルを設置して超微細構造間隔測定を行った。その際、取得データへの外部磁場の影響を低減するため、外部磁場補正コイルを導入し測定精度を検証した。
To use quantum computers for physics and chemistry simulations, we have to map the model Hamiltonian to qubit form. For spin-spin interaction models where the spin quantum number is S = 1/2, the mapping is straightforward, i.e., the spin-up and spin-down states are mapped to the ground and excited states of a qubit. We investigate the mapping of the Hamiltonian of a chain of interacting spins with S larger than 1/2, for which more than one qubit is needed to represent the 2S + 1 spin states. By comparing three different qubit mappings, we find that the Dicke mapping, where the spin states are represented as symmetric superpositions of multi-qubit states, results in the most compact form of the qubit Hamiltonian. By simulating two- and four-site spin chains with S < 3 using a trapped-ion quantum computer, we show that the Dicke mapping can be used for accurate simulations of time-dependent spin dynamics.