固体表面反応は不均一反応の代表的な例であり、反応の進行を単に時間軸で観測するだけではその本質を捉えることは難しく、反応がどのような場所で進行するかといった空間に関わる情報をも同時に得ることが重要である。従来の表面反応研究は時間軸に関する知見を速度論的な解析により得てきた。また、光誘起表面過程においては超短パルス光を用いた分光法により、フェムト秒領域の時間分解能で研究が行われている。しかし、これらの研究では、空間的に平均化した巨視的な量を取り扱うため、空間分解能は低い。一方、走査型トンネル顕微鏡(STM)に代表される走査プローブ顕微鏡は、原子分解能で表面構成原子の配列や吸着種の構造を明らかにしてきた。また、近年、非弾性トンネル電子分光により単一吸着分子の振動状態もプローブすることが可能となってきている。しかし、STM観察における時間分解能は決して高くない。このように、これらの時間領域、および空間領域に特化したそれぞれの研究手法を俯瞰すると、表面反応における究極的な研究の方向の一つとして、空間的には原子分解能を、時間的にはフェムト秒の時間分解能を兼ね備えた研究手法による単一吸着分子に関するフェムト秒時間分解分光やフェムト秒化学への展開が考えられる。本セッションでは、講演1においてSTMによる高い空間分解能を持った手法による単一分子における分子の励起、緩和、反応ダイナミックス、エネルギー変換について議論し、講演2ではSTMと超短パルス秒レーザーを用いた時間・空間分解分光の現状を議論し、セッションを通してこの方向の将来について議論したい。
エネルギーの移動や変換の過程を個々の分子や原子に対して詳細に記述することは、微小デバイスにおけるエネルギー利用の高効率化・高機能化、あるいは触媒表面における物質変換の効率向上を図る上で最も重要な要素の1つである。我々は、固体表面上に形成する分子界面におけるエネルギー移動・変換過程の学理を探求することを目指し、主に走査トンネル顕微鏡法(STM)による実験と密度汎関数法(DFT)による理論計算の両面で、分子・原子レベル研究を行っている。
STMは原子レベルの分解能を持つ顕微鏡としてだけでなく、表面上の原子や分子をあやつる手法として、あるいはそれらの化学的状態を特定するための分光手法としても、多くの関心を集めてきた。我々が特に注目して行ってきたのは、金属表面上の分子の振動状態を、非弾性トンネル電子により励起し、化学反応を誘起し、単一分子レベルの振動分光を行うことによる反応メカニズムの解明に関する研究である。さらに、分子と金属基板との化学的相互作用を最小限にすることによる新しい反応場を実現するため、金属表面に広いバンドギャップを有する金属酸化物や絶縁物質などの蒸着による絶縁超薄膜を形成し、吸着分子の励起寿命を長くすることにより得られる新しい化学反応経路を探索し、そのメカニズムを明らかにした。それに加え、絶縁超薄膜上の吸着分子にSTMからのトンネル電子を注入することにより単分子発光測定が可能になり、光STMを用いて局所構造や電子状態の変化等の光応答反応を検出している。本講演では、単一分子の励起、緩和、反応ダイナミックス、エネルギー変換に至る、STMを用いた単一分子化学と分光の最新研究を紹介し、今後の課題及び展望について議論する。
走査トンネル顕微鏡(STM)の発明から30年ほどになる。その間にSTMの仕組みを基盤とする多くの顕微鏡が開発されてきた。実空間で、しかも様々な環境下で原子レベルの空間分解能が実現されることから、これら顕微鏡が幅広い分野で利用され多くの成果をもたらしてきたことはよく知られている。既に完成された手法と受け取られることも多いかと思われるが、スピントロニクスやバイオへの展開を含め、現在も未開拓の領域を切り開く新しい技術が工夫され、SPMの最先端は大きく進展している。一方、多くの現象を深く理解するには、構造とあわせて量子過程のダイナミックスを詳細に解析する事が重要であるが、ナノスケール科学の発展により、微細構造や局所的に変調されたポテンシャルの中で生じる物理的、化学的過程を高い時間分解能で計測する技術の開発が強く求められている。我々は、この10年ほど、量子光学の技術とSTMを融合した光励起STMの開発を進めてきたが、本講演では、最近スピンダイナミックスの計測も可能になった、フェムト秒領域の時間分解能を持つSTMについて、装置・手法、そして、得られた結果の例を、実験を行う際の留意点など含めて紹介する。
植物の光合成反応(明反応)は,集光性色素タンパク質複合体(光合成アンテナ)が太陽光エネルギーを捕捉し,光反応中心複合体にエネルギー伝達することにより開始される。光反応中心複合体では,電荷分離反応が起こり,その起電力を利用することにより生体エネルギーを産み出している。これら機能性色素タンパク質複合体の構造が,X結晶構造解析を用いた研究により,原子スケールで解明されたことに触発されて,光合成初期反応の動作機構を解明するための研究が飛躍的に深化した。特に超高速レーザー分光計測を用いた研究により,光合成初期反応を実時間で探索することが可能となっている。本セッションでは,光合成初期反応の動作機構の理解に関する現状を俯瞰した後,光機能の発現のために中心的な役割を担っている光合成色素(カロテノイドおよびクロロフィル)と色素タンパク質複合体の光機能解明に関して第一線で活躍されているお二方の研究者に,最新のホットトピックスと今後の展望を解説していただいて,議論を深めたい。
カロテノイドの光学的な特徴はポリエン骨格に由来しているが,その構造から想像される以上に複雑な動的過程をもつ。古くから知られている励起状態は,光学遷移が許容な最低一重項励起状態S2と,それよりも低エネルギーに存在する光学禁制励起状態S1である。近年,S1以外にも数多くの光学禁制準位が存在することが明らかにされ,それらが光合成初期過程において果たす役割が注目されてきた。しかし,天然の色素タンパク複合体は異なる種類のカロテノイドを含んでいることと,一般的なポンプ・プローブ分光法では複雑な多準位系の区別が難しいことが,動的過程解明の障害となっていた。
我々は,再会合技術によりカロテノイドを純化した色素タンパク複合体にマルチ励起フェムト秒分光を応用して光合成初期過程の解明を進めてきた。マルチ励起分光は励起状態に共鳴した第二励起光を用いることで励起状態を選択的に観測できる分光法であり,複雑な多準位系を研究するための有力な手段である。講演では,色素タンパク複合体で特徴的に観測されるS*と呼ばれる励起状態について,フェムト秒誘導ラマン分光(FSRS)およびPump-Repump-Probe法により得られた特徴と光合成初期過程における役割を議論する。さらに,異なる光合成色素が再会合されたLH1複合体におけるエネルギー移動効率の違いについて報告する。
21世紀に入り,植物の光合成タンパク質の構造が次々に明らかにされた。このことは,複雑な植物の光合成タンパク質で起こる超高速の光反応 を,その構造に立脚して微視的理論に基づき理解することが原理的に可能となったことを意味している。しかし,解明された構造からの予想が難しい物理量が多くあるため,現実には構造に立脚した光反応の理解はなかなか進展してこなかった。一番の難問は,タンパク質に結合するクロロフィル分子の励起エネルギー(サイトエネルギー)を決定することである。それぞれのクロロフィルは,異なるタンパク質部位からの影響によりそれぞれに異なる励起エネルギーを持つが,その値を構造に立脚して予想する量子化学の手法は現在でも確立されていない。Thomas Rengerらのグループは,既知のスペクトルデータへのフィッティングという大胆な手法により求めたクロロフィルのサイトエネルギーを用いて,植物型光合成タンパク質の光反応を解析する微視的理論モデルを開発した。我々のピコ秒時間分解蛍光スペクトルのデータは,彼らの理論モデルにより非常にうまく再現されることが実証された。こうした理論と実験の融合から分ってきた光合成系の光反応について議論する。
生物は様々な時間を持っている。一日を周期とする概日リズム(厳密にはヒトでは約24時間11分周期)から、昼の長さと夜の長さの変化を基調とする季節の変化である光周性まで、色々なリズムによって生物機能が調整されている。概日リズムはバクテリアから認められ、これは昼間の紫外線による DNA複製時のダメージを回避するためといわれている。高等生物では概日リズムは睡眠や摂食行動と密接に関係がある。一方、光周性は植物の花芽の形成、落葉、動物の渡りや回遊、休眠、生殖腺の発達などを制御する事が知られる。これらの生物時計の本体やそれがどのように制御されるか、そして生物時計がどのように生物機能を調節するかに関し、様々なことが分かってきた。生物時計を制御する大きな要因として光がある。概日リズムが光パルスによってリセットされることや、光周性では日長の変化を検知して生体が反応する事も明らかにされている。本セッションでは、2人の演者に話題を提供していただき、生物が光をどのように利用して生理的反応を制御しているかに関して議論したい。
生体の中に流れる時間は、砂時計のように不可逆的に流れることもあれば、機械時計のようにまき戻ることもある。時間はいったいどのように体内に表現されているのであろうか?
我々は、哺乳類概日時計をモデル系として時間の内部表現の問題、とりわけ規則性を持つ外部環境の内部表現機構に興味を持ち、哺乳類概日時計の転写ネットワークの全体像を解明することを通じて自律発振機構(概日時計が恒常的な環境下において自発的な振動を生み出す仕組み)、温度補償性(概日時計の周期が温度変化に影響されずに生理条件範囲内で一定であること)やシンギュラリティ現象(概日時計が真夜中の光を浴びると停止してしまう現象)といった謎に取り組んできた。
自律発振機構では、細胞の中に朝・昼・夜の約8時間程ずれた3つの転写プログラムが2つの遅れをもった負のフィードバック機構を構成し転写ネットワークが自律発振する動作原理として働くことや、二つの酵素反応と1つのシンプルな基質からなるリン酸化振動子の設計可能性が示唆されている。つまり、時間が一周りする機構の一端が見えてきた。
温度補償性では、カゼインキナーゼIε/δというリン酸化酵素に対する阻害剤を用いると哺乳類の概日時計の周期を48時間に変化させることができることをこれまでに見出しており、さらにこの酵素が時計タンパク質由来の基質をリン酸化する反応が温度依存性を持たないことを見出した。
シンギュラリティ現象では、概日時計細胞集団が、真夜中の光という不規則な環境を各時計細胞の位相の違いとして表現し、あたかもそれを利用して応答性を変化させる仕組みが明らかになった。概日時計は外部光環境の規則性・不規則性を細胞集団の状態に表現している。
本討論会では、概日時計システムが頑強さと柔らかさをどのように実装し、外部光環境を内部に表現しているのか議論する。
熱帯以外の地域に生息する多くの動物は、餌が豊富で温暖な時期に子孫が成長できるように特定の季節に繁殖活動を行う季節繁殖という戦略をとっている。生物は様々な環境因子の中で日照時間(光周期)の情報をカレンダーとしているため、この性質は光周性と呼ばれる。多種多様な動物のなかでも鳥類は空を飛ぶため、生殖腺の大きさを急速かつ劇的に変化させるなど、特に洗練された季節適応能力を持つ。そこで我々はウズラを用いて動物が季節を感じる仕組みの解明に取り組んできた。哺乳類以外の脊椎動物は脳の中で直接光を感知することが知られていたが、脳内光受容器の実体は謎に包まれていた。我々は近年、脳内光受容器として新規な光受容器OPN5を同定した。また長日刺激によって繁殖活動を開始する脳内情報伝達機構も明らかにした。すなわち、長日刺激によって下垂体隆起葉で産生される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が視床下部に作用し、光周性を制御する鍵遺伝子(DIO2)の発現を制御するのである。TSHは下垂体前葉から分泌され、甲状腺に作用するホルモンとして知られていたが、下垂体隆起葉で産生され脳に作用する場合は、春告げるという全く異なる働きを持つことが明らかになった。
宇宙創成から現在に至るまで、宇宙の歴史は構造形成の歴史であるとともに、物質進化の歴史でもあった。ビッグバン直後に宇宙に存在した元素は、水素、重水素、ヘリウム、そしてわずかばかりのリチウムである。宇宙で初めて誕生した星はそれらから作られた。恒星の形成というと力学の問題のように思われるかもしれないが、それらの元素が織りなす化学過程と生成した分子の電磁波放射過程が重要な役割を果たしている。初代星の形成は天文学・宇宙物理学の最前線であり、その理解には原子分子物理学との協働が重要になっている。一方、いったん恒星が形成すると、その中での核反応によって炭素、酸素、窒素を初めとするさまざまな元素が合成され、超新星爆発などによってガスや塵の形で星間空間にばらまかれる。それらを原料として、星間空間においても様々な分子が生成するが、気相における分子生成とともに、近年特に注目されているのが星間塵上での分子生成である。電波、赤外線による観測や、実験室実験によって、様々な有機分子が星間空間に漂う塵表面上で生成していることが明らかになってきた。莫大な星間ガスが集まって新しい恒星と惑星系を形成するとき、星間空間で形成された有機物がどのようにして惑星系にもたらされるかについて、太陽系の起源との関連で関心が高まりつつある。本セッションでは、これら2つの最前線の話題を通して、宇宙初期からの原子・分子過程を議論したい。
最近の地上大型望遠鏡や宇宙望遠鏡を用いた深宇宙探査により、130億光年以上も離れた場所にある天体の姿を捉えることができるようになった。私たちの宇宙は138億年前にビッグバンとともに誕生したと考えられており、実に宇宙年齢数億年という早期に存在した天体を観測していることになる。初期宇宙の元素構成は単純であり、質量割合にして4分の3が水素、残りの4分の1がヘリウム、それにごくごく微量の重水素とリチウムが存在するだけである。このような宇宙の始原ガスからどのようにして最初の光輝く天体が誕生したのかは現代宇宙論および天文学の最先端の話題となっている。薄く広がる始原ガスが どのように冷却、凝縮し、星のような高密度の状態になったのかの理論研究はここ10年で著しく進展しており、中でもガスの熱化学進化に重要な化学反応と放射過程は同定されたといってよい。講演でははじめに始原ガスから星が誕生するまでの過程を再現したコンピューターシミュレーションを紹介する。その過程で重要となるおよそ50個ほどの化学反応の中で、いくつかのものは反応率そのものに大きな不定性があり、星形成過程の主要な不定要素となっている。このための理論研究と実験による反応率決定の研究を紹介する。さらに必要な研究の展望をのべ、最後に微量の金属を含むガスの熱化学進化を概観する。
宇宙の低温領域(分子雲〜10K)には,星や惑星が誕生する以前に,有機分子を含む150種を超える分子種がすでに存在している.分子雲環境では,活性化エネルギーを必要としない気相イオン分子反応が分子進化の主要なメカニズムであるが,一方で,水素,水,二酸化炭素,有機分子等の多くの分子生成には星間塵表面における化学反応が不可欠である.星間塵表面反応には,①表面が反応の第三体になるため,単純付加反応が起こりやすい,②低温表面にはHe以外のほぼすべての原子・分子が物理吸着できるため,多くの反応が期待される,③長時間の吸着が可能なため,長い相互作用が必要な反応が起こりうる,などの特徴がある.さらに,星間塵表面反応は分子生成だけでなく分子の重水素濃集(重水素含有率が高い)にも大きな役割を果たすことが分かってきた.また,最近の我々の研究から,星間塵表面上では水素分子などで核スピン転換が生じることが明らかになってきた.分子の核スピン状態は気相におけるイオン分子反応にも大きな影響を及ぼすことから,星間塵上での核スピンの振る舞いが注目されている.このように,星間塵表面での原子分子過程は分子進化に重要な役割を果たす.講演では,分子生成や重水素濃集の鍵を握る,特に水素が絡む低温表面過程:トンネル反応,表面拡散,原子核スピン転換等に関する実験研究を紹介する.
量子インターフェースというと、狭い意味では量子情報処理における異なる量子系の間の量子情報の受け渡しに関する研究をさすことが多い。今後の量子情報処理分野の発展において、分散型の情報処理や量子通信における量子中継器など量子ネットワークを構成するためには、光と原子・イオン、光と量子ドット、核スピンなどの異なる量子系の間のインターフェースの開発は必須である。量子中継器の場合、例えば原子系と相互作用する光子と光ファイバーとのインターフェースが重要な技術となる。一方、量子インターフェースを広い意味にとらえて古典的な情報まで含めると、光周波数コムを仲介とした光ファイバーによる光周波数伝送技術を用いて、異なる場所にある原子時計の周波数比較を行う技術なども量子インターフェースという視点でとらえることができる。原子時計の研究は今世紀になって大きく進歩し、従来のセシウムマイクロ波標準をはるかに凌駕する確度の光時計が実現している。本セッションでは、前者の観点からの研究として、原子系などとの結合を目指した光の波長変換による量子インターフェースの研究、また、後者の観点から、最近の発展の著しい光格子を使った原子時計の研究の展開と現状について講演して頂き、議論を行いたい。
普遍な周期現象を利用して、時間を共有する道具が時計でした。かつての天文観測に代わり、現在では、遥かに正確な周期性をもつ原子の振動が時間を決めています。さらに進化した原子時計は、重力によって曲がった相対論的な時空を映し出すことで他者との時間共有の難しさを浮き彫りにします。この一方、超高精度な原子時計は、原子時計が基礎をおく物理定数の恒常性まで研究の対象にしようとしています。
光格子時計は、魔法波長のプロトコルによって、超高速・高精度な新たな原子時計の可能性を提起しました。2001年の提案以来、現在までに20以上の研究拠点で開発が進み、光格子時計の精度は、現行の国際単位系・SI秒の精度を凌駕し秒の再定義を迫ろうとしています。
最近、我々は、黒体輻射の電場の影響を低減した2台の光格子時計の周波数比較を行い、18桁目の周波数の一致を確認しました。この時計精度では、地上で高低差1cmの重力ポテンシャル差さえ、重力赤方偏移として読み出すことが可能になります。
理研と東大に設置した2台の超高精度・光格子時計を光ファイバーでつなぎ、時計の重力シフトを使って、重力のポテンシャルマッピングを行う「相対論的測地」の実証実験、異種原子の高精度比較による物理定数の恒常性の検証、中空光ファイバーを用いたミニチュア光格子時計の開発など、今後の研究の展開と現状について議論します。
量子情報技術は光、冷却原子、トラップイオンやダイアモンド中のNVセンターなど様々な物質系で精力的に研究されている。光は大規模化に課題は残るものの、基本的な量子演算が可能であるとともに、離れた系への量子状態送信の担い手として重要な役割を果たしている。量子暗号通信に代表される長距離量子通信を目指した研究においては光ファイバー通信による長距離化が行われているが、更なる長距離化のためには中継地点に量子メモリを配置し、光子と量子メモリの量子もつれを作り、光ファイバーでの損失の影響を低減する量子中継が必要と考えられている。光ファイバー通信で損失の少ない光波長は1.3μmおよび1.5μmであるため、これらの光波長の量子状態が望まれる。一方、量子メモリの候補としてこれまで精力的に研究されている冷却原子、トラップイオンやダイアモンド中のNVセンターでは可視光付近の光子との量子もつれが実現している。これらの波長の違いを埋める方法の一つとして、量子状態を保持した光波長変換の手法が注目されている。本講演では我々の研究室で成功している可視光付近の光子から通信波長帯光子へのコヒーレントな波長変換およびその量子インターフェースとしての応用を紹介したい。