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AMO討論会プログラム

AMO討論会 ポスター発表 要旨

1.光格子および調和トラップ中の冷却原子気体のダイナミクス

山越智健,Alexander ItinA,渡辺信一(電通大先進理工,ASpace Research Institute,Moscow)

光格子中の冷却原子系は物性のシミュレーターや量子コンピューティングへの応用の可能性が期待されている。我々のグループは光格子と調和トラップ中で生成された冷却原子波束のダイナミクス[1]について研究を行っている。我々は原子間相互作用を含まない1次元ボーズ系をターゲットとして、数値シミュレーションによりこの実験の理論的解析を行った。この系では基底状態の冷却原子に対して光格子の深さを時間変調することにより、異なるバンドへ励起が可能である。主として励起された波束の時間発展について考察を行った。励起された波束は周期的な運動を行うが、その運動がバンド構造に依るブラッグ反射に起因する事を示した。
[1] J. F. Sherson et al., New Journal of Physics 14, 083013 (2012); P .L. Pedersen et al., Physical Review A 88, 023620(2013).

2. Measurement-device-independent quantum key distribution for Scarani-Acin-Ribordy-Gisin 04 protocol

水谷明博(大阪大学大学院基礎工学研究科物質創成専攻物性物理工学領域)

測定装置無依存量子鍵配送(MDIQKD)は、その安全性が光子検出器の不完全性によって全く脅かされない方式として近年提案された。従来の研究は専らBB84プロトコルに基づいていたが、我々はSARG04を使うことを考えた。ユーザーからすると、SARG04はBB84と古典的なデータ処理のみが異なる方式だが、これをMDIQKDにするにはイブの実験系も変更しなければならず、我々はその実験系を提案した。さらに単一光子放出イベントのみならず多光子からも鍵抽出が可能であることを証明し、鍵生成率の距離依存性も明らかにした。

3.有機分子における光励起三重項状態の電子スピンを用いた動的核偏極によるNMR分光・MRIの高感度化

根来誠(大阪大学基礎工学研究科)

ペンタセン等の有機分子における光励起三重項状態では、温度と磁場に依存せず占有数分布が非常に偏る。この状態の電子スピン偏極を、マイクロ波を用いて核スピンへと伝えることで、核スピン偏極率を高めることができる。今回この方法を用いて、室温固体中で偏極率を34%まで高めることに成功した。これは、NMR分光やMRIが通常行われる環境での偏極率に比べて1万倍以上高く、飛躍的な高感度化を可能にする方法として期待される。

4.トロイド型微小光共振器を用いた光パルスの群遅延の観測

浅野元紀,Sahin Kaya OzdemirA,生田力三, 山本 俊, 井元信之, Lang YoungA(大阪大学基礎工学研究科物質創成専攻 物性物理工学領域, Department of Electrical and Systems Engineering Washington University St. Louis A

光パルスの群遅延は非線形光学効果の増強効果が知られており様々な物理系において実験が行われてきた[1].光共振器と光導波路からなる系では,共振器−導波路間の光結合の大きさによって群遅延を制御することが可能であり,球型微小光共振器においてその観測結果が報告されている[2].本発表ではトロイド型微小光共振器とテーパーファイバからなる系を用いて光パルスの群遅延を観測した結果を報告する.
[1] R. W. Boyd et al., Progress in Optics 43, 497 (Elsevier, Amsterdam, 2002).
[2] K. Totsuka et al., J. Opt. Soc. Am. B, 23, 10 (2006).

5.通信波長帯光子を用いたエンタングルメント抽出実験

逵本吉朗1,勝瀬大祐1,安藤誠1,生田力三1,山本俊1,小芦雅斗2,井元信之11大阪大学大学院基礎工学研究科,2東京大学大学院工学系研究科光量子科学研究センター)

バルクのβ-ホウ酸バリウム(BBO)結晶を用いた波長非縮退パラメトリック下方変換によって生成した通信波長帯1551 nmと可視域波長780 nmの偏光エンタングル状態の光子対を用いてエンタングルメント抽出の実験[1]を行った.エンタングルメント抽出とは,同じ位相雑音を受けてエンタングルメントが弱まった二つの光子対から,局所操作と古典通信によって一対の最大エンタングル状態を抽出する操作である.本研究では,液晶によって位相雑音を印加することで,エンタングルメントが弱まった光子対に対してエンタングルメント抽出を行い,抽出された光子対についてエンタングルメントが回復していることを確認した.
[1] T. Yamamoto, M. Koashi, S. K. Özdemir, and N. Imoto, Nature, Vol. 421, No.6921, pp. 343-346 (2003).

6.Sub-10 fs光パルスを用いた紅色細菌光合成アンテナにおける色素分子間コヒーレンスの観測

小澄大輔,堀部智子,杉崎満,R.J. Cogdell,橋本秀樹(大阪市立大学 複合先端研究機構)

光合成アンテナ系では、光合成色素による高効率な光吸収とエネルギー伝達が行われている。光合成色素分子間エネルギー伝達が、拡散的であるかコヒーレンス時間内に起こる現象であるのかは、古くから提唱されている問題であり、現在も未解決である。本研究では、紅色細菌由来の光合成アンテナ系LH2を構成する2つのリング状超分子会合体(B800, B850)に着目し、両者を同時励起可能な超広帯域sub-10fsを用いたコヒーレント分光を行った。

7.フェムト秒時間分解分光によるカロテノイド‐クロロフィル人工光合成アンテナの機能評価

○西口智也1, 小澄大輔2, 天尾豊1, 2, 橋本秀樹1, 21 大阪市立大学大学院理学研究科,2 大阪市立大学複合先端研究機構)

光合成アンテナに結合しているカロテノイドは、可視光を吸収し近接するクロ ロフィルへ励起エネルギーを伝達する。その中でも高伝達効率を実現する光合 成アンテナを模倣するには、本来光学禁制であるカロテノイドの S1 準位を介し たエネルギー伝達を利用することが重要である。本研究は、カロテノイドであ るクロセチンをクロロフィル含有の陽イオンミセルの表面もしくは内部に固定 した人工光合成アンテナを水溶液で構築した。そして、カロテノイドからクロ ロフィルへの singlet-singlet 励起エネルギー移動をフェムト秒時間分解分光法で 評価した。クロセチンの分子構造は対称性が極めて高いが、本実験系では S1 準位からの高効率なエネルギー移動を観測した。

8.投影型イメージング質量分析用時間検知型半導体検出器の開発

河井洋輔,松岡久典,間久直,青木順A,豊田岐聡A,藤田陽一B,池本由希子B,新井康夫B,粟津邦男(大阪大学大学院工学研究科,大阪大学大学院理学研究科A,高エネルギー加速器研究機構B

投影方式の飛行時間型イメージング質量分析では、検出面に飛来するイオンの位置情報と到着時刻を同時に計測できるイオン検出器が求められる。現在我々は、イオンの検出と時間情報の取得を格子状に並んだ各ピクセルが独立に行うことで、イオンのマルチヒットにも対応可能な位置・時間検知型半導体検出器の開発を進めている。試作した検出器のイオン検出性能を評価するため、イオン源およびデータ取得システムを作成し、イオン照射試験を行った。

9.単一光子レベルで入力光のコヒーレンスを保持する部分波長変換器の実証

小林俊輝,生田力三,加藤大織,三木茂人A,山下太郎A,寺井弘高A,藤原幹生A,山本俊,小芦雅斗B,佐々木雅英A,王鎮A,井元信之(大阪大学基礎工学研究科,情報通信研究機構未来ICT研究所A,東京大学光量子科学研究センターB

周波数自由度のビームスプリッターとして記述される波長変換では、変換効率によらず変換光と非変換光が入力光の位相を保持することが期待される。 我々は、平均光子数を単一光子レベル以下に弱めた波長780 nmのレーザー光をPPLNに入力し、差周波発生過程によって波長1522 nmの光に 波長変換を行った。その結果、本波長変換器で到達できるいずれの変換効率においても、変換光および非変換光ともに0.88を超える高い明瞭度で入力光の位相を保持できることを確認した。

10.高強度フェムト秒レーザーによる高次非線形レーザーアシステッド電子散乱過程の観測

石田角太,森本裕也,歸家令果,山内 薫(東京大学大学院理学系研究科化学専攻)

高強度フェムト秒レーザー場におけるXe試料による電子散乱実験を行い、散乱電子のエネルギー分布と角度分布を測定した。その結果、多光子遷移を伴うレーザーアシステッド電子散乱信号の観測に成功した。散乱電子のエネルギースペクトルには、通常の弾性散乱信号に加え、n 光子分エネルギーシフトした信号が現れ(n = 1, 2, 3, 4, 5, 6)、それらの強度は理論シミュレーションの結果と良い一致を示した。

11.Hyperspherical approach to very low-energy collision of Coulombic three-body system

Y. Zhou1, S. Watanabe1,*, O. Tolstikhin2, and T. Morishita11. Department of Engineering Sciences, University of Electro-Communications, 2. Russian Research Center “Kurchatov Institute”

Quantum calculations of very low-energy collision of Coulombic three-body system in the hypersperical elliptical coordinates are presented. In this scheme, the hyperangular basis functions are calculated by approximately separating the hyperspherical coordinates (ξ,η). The nonadiabitic coupling between the hyperradius and hyperangular variables are treated with the slow/smooth variable discretization method in combination with the R-matrix propagation technique. Two-dimensional matching procedure is implemented to determine the boundary conditions for the asymptotic states. The accuracy of this scheme allows us to calculate the Coulombic three-body collision at energies as low as 10-8 a.u. As illustrative results, the phase shifts for H-e, Ps-e and H+-P collisions are shown.

12.飛行時間型質量分析計用の低抵抗MCP検出器の飽和特性の評価

今岡成章(大阪大学理学研究科物理学専攻)

飛行時間型質量分析計は原子・分子をイオン化し, 電場で加速して, 飛行時間で分離して測定するため, 混合物に含まれる微量な原子・分子を網羅的に測定する方法として有用である. 飛行時間型質量分析計用の検出器として, マイクロチャンネルプレート (MCP; microchannel plate) が広く使用されているが, MCPは数百MΩの高抵抗体であるため, 出力が飽和しやすく, 強度の強い物質と微量な物質を同時に測定するときに問題点となり得る. MCPの出力の飽和の問題点を改善するため, 従来のMCPより抵抗が1/10〜1/100程度の低抵抗MCPを開発し, 飽和特性を評価した.

13.強レーザー場中の多電子ダイナミクス ―電子配置と複数活性分子軌道のエネルギー解析―

大村周,河野裕彦(東北大学大学院理学研究科化学専攻)

原子・分子が近赤外強レーザー場にさらされると、トンネルイオン化や高次高調波発生などの非線形現象が起こる。特に近年、複数の分子軌道からのイオン化が報告され注目を集めている。そこで我々は時間依存多配置理論を用いてLiH分子の電子ダイナミクスを求めた。得られた結果から分子軌道ごとに分解した。
高次高調波スペクトルを計算し、異なる軌道が関与するスペクトルも重要であることがわかった。このような電子ダイナミクスの原理を解析するため、多配置理論の形式から電子配置と軌道のエネルギーを導出した。そして、これらのエネルギー交換によって複数の分子軌道が関与するダイナミクスが駆動されていることを明らかにした。

14.フェムト秒レーザーによるポストイオン化SNMSの開発

○寺田健太郎1・中林誠1・上岡萌1・豊田岐聡1・石原盛男1・青木順1・中村亮介2・日野裕太1(大阪大学大学院理学研究1・大阪大学産学連携本部2

太陽系の起源と進化を明らかにする上で、隕石やアポロ月試料に1次イオンビームを照射し生成した2次イオンを検出するSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析が盛んに行われている。しかし、スパッタされた2次イオンの生成効率が1%以下と非常に低いことがSIMS分析の大きな問題点であった。そこで我々は数年前より、スパッタされた中性粒子をフェムト秒レーザーによってポストイオン化する「レーザーイオン化SNMS(Sputtered Neutral Mass Spectrometry)」の開発を行ってきた。本発表では、Pb板にGaイオンを照射し、スパッタされたプリュームにフェムト秒レーザーの出力を最大1.2×10^14 W/cm2まで段階的に上げながら照射したときの、Pbの2次イオン強度の変化、および装置の特性について報告する。

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