討論会について 討論会に申し込む プログラム お知らせ お問い合わせ
   
AMO討論会 ポスター発表 要旨
 
1.Physical origin of the universal three-body parameter in Efimov physics
遠藤晋平(東京大学大学院理学系研究科物理学専攻)
Bose粒子間の散乱長が大きな領域ではEfimov状態という3体束縛状態が存在し、近年冷却原子気体の実験で観測された。Efimov状態を記述する 重要な量として3体パラメータと呼ばれる量があり、冷却原子気体の実験で近年様々な原子に対しこの値が測定された。その結果、従来の予想とは異なり、3体パラメータが原子によらないユニバーサルな値を取ることが発見され、注目を集めている。我々は3体パラメータがなぜユニバーサルな値を取るか、その物理的起源を理論的に解明した。

2.数サイクルパルスを用いたポンプ・プローブコインシデンス運動量画像法によるメタン分子の解離過程の観測
○島本章弘,安藤俊明,三浦瞬,岩崎純史,山内薫(東京大学大学院理学系研究科化学専攻)
近年の研究から,強光子場における炭化水素分子の構造の変化や解離は,水素原子の速い移動を伴うことが明らかとなっている。本研究では,高強度数サイクルパルスを用いたポンプ・プローブコインシデンス運動量画像法によって,強光子場におけるメタン分子内の水素の移動過程を高い時間分解能で観測した。その結果,H+,H2+,H3+が解離する3つの過程がそれぞれ観測された。各イオンの放出運動量には,ポンプ光とプローブ光の遅延時間の増加にともなって減少する成分があり,最も早く減少したのはH+が解離する過程であった。また,H+はレーザーの偏光方向に多く放出されたのに対し,H2+の放出運動量は等方的であった。

3.フェムト秒レーザーアブレーションによるクラスター負イオン生成:窒化アルミニウム
小林徹1、松尾由賀利1,2 (理研1、法政大理工1,2
固体試料のフェムト秒レーザーアブレーションによって生成するイオン種の検討により、クラスター負イオンの相対的なエネルギー安定性(生成熱)について検討している。絶縁体である窒化アルミニウム基板から、純アルミニウム(Aln-)および1窒化アルミニウム(AlnN-)クラスター負イオン系列の生成を検出した。2窒化物以上のアルミニウムクラスター負イオンAlnNm-は検出されなかった。この結果はAlnNm-クラスターの生成熱がAln-およびAlnN-に比べて小さいことを示唆しており、今後機能性材料として期待されているAlNナノクラスター生成に向けた重要な知見となるだろう。

4.高強度円偏光レーザーパルス照射による原子のトンネルイオン化
大海真貴1、Oleg I. Tolstikhin 2、森下亨11 電気通信大学先進理工学専攻、2 National Research Center "Kurchatov Institute")
高強度レーザーパルスを原子に照射すると、電子が量子力学的トンネル効果によりポテンシャル壁を透過することでトンネルイオン化が生じる。本研究は,断熱漸近理論を用いてトンネルイオン化を解析する。トンネルイオン化のための断熱漸近理論は、イオン化電子をSiegert状態で表現することで原子状態の位相を厳密に取り扱う。このため、イオン化電子の運動量分布における干渉効果をより詳細に議論することができる。一方、円偏光レーザーパルスによるイオン化電子の解析では、電子とイオンの再衝突現象が抑制されるため、トンネルイオン化の純粋な情報を解析することができる。発表では、断熱漸近理論の結果と時間依存シュレーディンガー方程式の数値解を示し、比較を行う。

5.新規の分散補償法を利用した紫外-可視-近赤外光のアト秒パルス列発生
○中村佳孝,吉井一倫,Nurul Sheeda Suhaimi,桂川 眞幸(電気通信大学先進理工学専攻)
ラマン遷移過程を断熱励起することにより生成したUV-VIS-NIR帯域にわたる広帯域離散スペクトルに対し、光軸上に複数枚の透明媒質を置くだけという非常にシンプルな方法でアト秒パルス列を得ることができる手法を提案した。離散スペクトル光発生のための2波長の励起光として、1波長注入同期レーザーから出力される801.08172 nmのパルス光と、バルク型周期分極反転ニオブ酸リチウムにより連続光から高強度化された1201.6225 nmのパルス光を用いた。発生させた離散スペクトルに本手法による分散補償を行い、位相測定装置を用いてスペクトル位相を評価することで、提案したパルス圧縮原理の正当性の実証を行う。

6.時間依存多配置波動関数理論による1次元水素分子の波動関数
○井手 善広,加藤 毅,山内 薫 (東京大学大学院理学系研究科化学専攻)
多配置展開法を用いて水素分子の基底状態の分子波動関数を計算した.電子軌道の数 nn = 5のとき,相関エネルギーの値は,その数値的な厳密解の99.9 % に達した.また,電子およびプロトンの密度分布関数において、それぞれの分布のピーク値の0.1 % 以上である領域では、密度分布関数の振幅は、数値的な厳密解と相対誤差2% 以内で一致した.このことは,多配置展開法によって、分子波動関数を高い精度で記述できることを示している.さらに,n = 5のとき,多配置展開法では,波動関数の表現に必要な配列要素の数が,従来法であるBorn-Huang 展開に比べて4% 以下であった。このことは,多配置展開法が極めて効率の高い展開法であることを示している.

7.原子分子系における量子電磁力学に基づく時間発展の計算方法の研究
市川和秀、福田将大、立花明知 (京都大学工学研究科マイクロエンジニアリング専攻)
原子・分子系の時間発展を量子電磁力学に基づいて計算する方法について議論する。電子場・光子場に加えて原子核場を量子場として取り入れ、束縛状態において有限時間の変化を場の量子論的に計算するためのわれわれの提案と現段階での近似法を解説する。これは、場の演算子を束縛基底で展開して生成消滅演算子を定義して、ハイゼンベルク表示の演算子の期待値(密度行列)の時間発展を計算するというものである。水素原子の電荷密度の時間変化についての数値計算結果を示し、それが仮想電子・陽電子の対生成対消滅に起因する振動を見せることを示す。

8.Control of stopping position of Rb beam in Superfluid Helium for nuclear laser spectroscopy of RI atoms
X.F.YangA, T.FurukawaB, K.ImamuraC, T. FujitaD , H.TetsukaE, Y.YamaguchiD, Y.TsutsuiE, Y.MitsuyaE, Y.IchikawaF, Y. IshibashiG, N.YoshidaF, H.ShiraiE, T.WakuiH, T.KobayashiA, A.HatakeyamaI, M.WadaA, H.UenoA, T.ShimodaD, K.AsahiF and Y.MatsuoA (RIKENA, Tokyo Metropolitan UnivB, Meiji UnivC, Osaka UnivD, Tokyo Gakugei UnivE, Tokyo Insti. Tech.F, Tsukuba UnivG, Tohoku UnivH, Tokyo Agricul. Tech.I)
A new laser spectroscopy technique named "OROCHI (Optical Radioisotope atom Observation in Condensed Helium as Ion-catcher) had been developed for investigating the structure of exotic nuclei of extremely low yield by measuring nuclear spins and moments. It had been proved workable by lots of off-line experiments on-line experiments. In OROCHI experiment, a system mainly comprised of an energy degrader and two plastic scintillators plays a key role to control accurately the stopping position of the beam in He II when it works with the photo-detection system. And this stopping position control system is validated successfully again during the second on-line experiment with the 84,85Rb beam, after some upgrades based on the LISE++ calculation.

9.反転する渦を持つ光ビームの運動量分布の測定
宮本洋子1、和田篤2、米村高志1、武田光夫3 (電通大1、防衛大学校2、宇都宮大3)
近年、特徴的な分布を持つ光ビームが生成されるようになり、これらの持つ力学的性質に興味が持たれている。
我々は偏光を用いた位相シフト干渉法によって、反転する渦と非点収差を持つ光ビームの詳細な位相分布の測定を行い、測定データからビーム断面内のエネルギー流および角運動量分布を求めた。反転の前後ともに正負両方の角運動量分布が存在すること、ビーム全体の角運動量が一貫して負であることが実験的に確認された。

10.配置換相互作用法に基づく量子古典混合核-電子ダイナミクス計算法の開発
○国定 友隆、牛山 浩、山下 晃一(東京大学工学系研究科化学システム工学専攻)
核と電子の強い非断熱相互作用により、電子状態が単一の断熱波動関数で表せなくなることがある。このような過程における電子ダイナミクスを調べるための方法として、量子古典混合法の一つである、Ehrenfestダイナミクス法の開発を行っている。開発状況と、簡単な分子について仮想的な条件で計算を行った結果を述べる。非断熱遷移やそれに誘起された電子ダイナミクスに関して定性的に議論し、非断熱過程に特異的な現象の観測可能性などについて議論することを目的とする。

11.不安定核原子のレーザー核分光へ向けたクライオスタットの開発
K. Imamuraa, T. Furukawab,c, T. Wakuid, X.F. Yangc,e, Y. Yamaguchia, H. Tetsukaf, Y. Mitsuyaa, Y. Tsutsuif, T. Fujitag, Y. Ebaraf, M. Hayasakaf, S. Araia S. Muramotoa, Y. Ichikawah,c, Y. Ishibashic,j, N. Yoshidah,c, H. Shiraih,c, A. Hatakeyamai, M. Wadac, T. Sonodac, Y. Itoc,j, H. Odashimaa T. Kobayashik, H Uenoc, T. Shimodag, K. Asahih and Y. Matsuoc (Department of Physics,Meiji University, bDepartment of Physics, Tokyo Metropolitan University, cRIKEN Nishina Center, dCyclotron Radioisotope Center,Tohoku University, eDepartment of Physics, Peking University, fDepartment of Physics, Tokyo Gakugei University, gDepartment of Physics, Osaka University, hDepartment of Physics ,Tokyo Institute of Technology, IDepartment of Applied Physics, Tokyo University of Agriculture and Technology, jDepartment of Physics,University of Tsukuba, kRIKEN ASI)
我々はレーザー・マイクロ波/ラジオ波二重共鳴法と超流動ヘリウム(He II)を組み合わせた新たな核構造研究手法の開発を行っている。不安定核原子に対する手法開発には、加速器施設でイオンビームとして生成される原子核を効率良くトラップし中性原子とする必要がある。我々はこのトラップ媒質として、高密度な媒質であるHe IIを用いており、ほぼ100%に近くトラップできる。入射したイオンはHe II中で中性原子となり、そのまま測定を行う事が可能となる。本研究においてHe IIを保持し、安定した分光環境を生成するクライオスタットの開発は要となる項目である、本発表ではこれまで開発・整備を行ってきたクライオスタットの詳細について発表する。

12.バンド励起された光格子中Fermi粒子のダイナミクス
山越 智健, 渡辺 信一 (電気通信大学先進理工学専攻)
近年、冷却原子・分子の分野では光格子中の粒子についての研究が盛んに行われている。現在までBose粒子を対象として多くの実験が成されてきたが、 Fermi粒子に関しては少ない。2013年にはFermi粒子系において、バンド励起された粒子およびホールのダイナミクスが実験的に観測された。我々 はこの系について理論研究を行っている。本ポスターでは、バンド励起された粒子のダイナミクスにおけるパラメーター依存性について発表する。
 
↑Top
←戻る